トラック隊列、保険で後押し=自動運転のリスク補償―損保業界

 深刻なドライバー不足による「物流危機」解消の切り札と期待される「トラック隊列走行」に対応した保険の開発に損害保険会社が乗り出している。隊列走行は、先頭車両の加減速やハンドル操作の情報を通信で後続車両に伝え、追随させる自動運転技術。技術面や安全性の課題を検証し向上させる実証実験が高速道路で行われており、特有のリスクを補償し実用化を後押ししたい考えだ。  実用化の最大の課題は通信が途絶え、後続車両が追随できなくなり、立ち往生するケースだ。他車両に隊列に割り込まれたときなどに、こうした問題が起きる恐れがある。経済産業省の担当者は「車両をつなぐ鎖が切れるイメージで、特有のリスクと言える」と話す。  損害保険ジャパンは4月、通信が途切れ、隊列走行ができなくなった場合の積み荷運搬や車両移動の費用、割り込み車との接触事故などを補償する保険の販売を開始。発売に先立ち2月、経産省などが新東名高速道路で行った有人の先頭車両を無人のトラックが追随する「後続無人」の実験で採用された。  隊列走行の保険は、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が2019年、後続無人での実証実験開始を受け、業界で初めて発売。後続車が走行不能となった場合に運転手派遣費用などを補償する。三井住友海上の担当者は「社会実装に向け、業界で先駆けて商品を提供したかった」と振り返る。  経産省は、まず21年度に後続有人運転を、22年度以降に後続無人走行を、それぞれ実用化させる目標を掲げる。後続無人に対応する保険の登場について、同省担当者は「従来の保険ではカバーし切れないリスクを補償できるのは、大きな前進だ」と評価している。 

[時事通信社]