ESG投資を加速=「コロナ債」に需要―生保各社

 生命保険各社が環境や社会課題の解決を重視する「ESG投資」を国内外で加速させている。新型コロナウイルス流行を受けて医療物資の拡充などを目的とする「コロナ債」の需要が拡大。気候変動や人口増加など地球規模の課題に投資の力を借りる取り組みは、長期的なリターンも期待できるとして関心が高まっている。  最大手の日本生命保険は、来年4月から債券や株式、不動産など全ての投融資の判断に「ESG評価」を導入する。第一生命保険も全面的に採用する計画で、明治安田生命保険や住友生命保険も検討を急いでいる。  第一生命は今年6月、製薬会社などの感染症ワクチン開発を支えるために世界銀行グループが発行した「ワクチン債」を約158億円購入。かんぽ生命保険は欧米金融機関が発行したコロナ債を約480億円買い入れ、世界的な医療体制の整備を後押しすることにした。  ESG投資は欧米で先行したが、近年は日本でも運用規模が急速に拡大。「持続可能な社会構築に対する姿勢次第で、企業の価値、収益性が高まる傾向にある」(日本生命)との見方が台頭している。  政府は2050年までに温室効果ガス排出を「実質ゼロ」に抑え込む実行計画を決めた。各種規制の予見可能性を高めて、見合った行動を企業に促すESG評価は、「投資効果が目減りするリスク」(第一生命)にも配慮。長引くコロナ禍を見据えた世界的な低金利環境下、生保各社のESG運用が社会の持続可能性を左右する。 

[時事通信社]